医療の現場において、ヘルスリテラシーは患者に様々な影響を及ぼしている。よりよい治療を行うためには、患者の側にも、医療行為や治療方法などの情報を理解し、活用できる力が必要になる。そこには、医療現場で医師や看護師などの医療従事者から得られる情報だけではなく、書物やインターネットによる検索から得られる情報も含む。情報を得るためには、ある程度の技量が必要である。また、入手済の情報を活用できる能力も患者側に求められる。このような一連の能力がヘルスリテラシーだ。ヘルスリテラシーは、病気になったときだけに必要なものではなく、病気の予防や健康維持にも役立つ。しかし、ヘルスリテラシーは個人によって偏りがある。治療方法や病状について医師の説明を受けた後、理解できないまま、理解できたと返事をする患者も少なくはない。このため、医師による説明の後にもう一度、看護師から同じ内容の説明をすることも、時として看護師の大切な役割になる。情報は、複数回聞くことによって定着すると言われるからだ。このとき看護師は、医師と全く同じ言葉で説明するのではなく、一般人にとってわかりやすい言葉を選ぶことが必要である。また、患者が本当に理解できたかを確認するために、ティーチバックという方法を使う医師もおり、その効果は認められている。しかし、医師に迷惑をかけないようにという気遣いから、わかったふりをしてしまう患者にとっては、気軽に質問できる雰囲気づくりがなにより大切である。