ヘルスリテラシーは、一般市民が健康に関する情報を入手し、健康促進のため活用する能力のことで、疾病を予防し医療の効率化を図る上でも非常に重要だと言える。ヘルスリテラシーが高くなれば、医療機関を利用する市民が減り、仮に疾病に罹患してもそれぞれの症状に応じて最適な医療機関を選択できる。したがって、看護師などの医療従事者にとっても、ヘルスリテラシーの向上による恩恵が大きい。だが、実際には、ヘルスリテラシーを一般市民だけの力で高めることは困難だ。セカンドオピニオンを求めるべきかといった問題や、検査を受けるべきかという選択について、予備知識のない素人に判断を要求するのは酷だと言われている。ヘルスリテラシーを高め、こうした問題を一般市民が自力で解決できるようになるには、開業医などが地域密着型の医療を行い、かかりつけ医として常時市民の意識を高める体制が有効である。または、訪問看護師が生活相談員のような役割を担って各家庭を周り、ヘルスリテラシーを高めるよう啓蒙していくことが必要だろう。病気にかかってから初めて患者と医療従事者が接触する現状の体制では、健康な段階でヘルスリテラシーを高めることが困難といえる。市民が健康なうちに、看護師がヘルスケアやヘルスプロモーションなどの段階別に個別具体的な提案を行い、理解してもらうことが大切なのだ。ヘルスリテラシーを高めるには、長期にわたり、根気よく知識を広げる活動が欠かせないだろう。看護師などの医療従事者による啓蒙活動が奏効すれば、結果として治療段階で医療従事者にかかる負担が減り、医療全体を円滑化することにつながるのだ。